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死ぬことで開くドア

先日、母方祖母の家にいたコーギー犬(コーちゃん、メス)が亡くなった。15歳だったので、大往生であった。私か妻が仕事から帰るまで、祖母宅にいることが多かった。そのため、息子はコーちゃんと随分接している。

「コーちゃんね、いっぱーいいっぱーい いきててね、おーきなはこにはいって、ながーいねんねぐーぐーして、とーくにいっちゃったの」

息子はそう言った。それからしばらくして、私と一緒に布団の上で遊んでいた時、息子はゴムボールを台に置き、

「ボールさんね、ねんねぐーぐーって、ずーっと、ねんねぐーぐーになっちゃったから、おーきなはこにはいってね、とーくにいくの。でも、さみしくないの」

と言った。必死に、収まるところを探している様子がわかる。見ていてとても辛い。

その後、朝、私が保育園に連れて行くと、泣いて私から離れたがらない日が2日ほど続いた。保育園の先生に「何か哀しいことがありました?」と聞かれ、祖母宅の犬が亡くなったことを告げる。先生は、「そっかー…。よし、漱ちゃん、コーちゃんのことを語ろう!」と言うと、「うん」と涙を流しながらも、先生の元へ行った。

帰宅後、妻にそのときの様子を伝える。妻が「そっかー…。漱ちゃん、コーちゃんいなくなって、哀しかったんだねー…」と言うと、息子は私に無言で抱きつき、それから妻に抱きついた。そして妻に、「くんくん、いてよかったー…」と言った(私は“くんくん”というあだ名で呼ばれている)。

また別の日。私が少し遅く帰宅した時、妻と息子は風呂からあがって来るところだった。「くんくん、おつかれー!」。息子はそう言った。私は手を洗い、タオルにくるまれた息子を抱き上げ、暖房のついているリビングへ向う。そのとき、「いま、くんくんっていったのは、あのドアも、くんくんっていうの」と言う。

〈え? あのドアもくんくんっていうの?〉
「そう。くんくんも、くんくん、っていうんだけど、あのドアも、くんくん、っていうの。だから、いま、そうたくんが、おつかれーっていったのは、あのドアのくんくんなの」
〈なんと!!そうだったのかぁ〉
「あのね、そうたくんが、まだ、バブバブのときにね、じつは、あのドアのくんくんは、しんじゃったの」
〈え…〉
「だからね、いまは、ひらくの」
〈そうか…。死んじゃったから、あのドアのくんくんは、開くようになったんだね〉
「うん、そうなの」
〈死んじゃう前は、ドアのくんくんは、開かなかったのかな?〉
「うん。あ、ひらかないんじゃなくって、はずれてて、もうちょっとおおきかったの。それで、おかーさんとか、くんくんとか、そうたくんといっしょに、プラレールであそんだり、ごほんよんでくれたり、いっぱーい、いっぱーい、あそんでくれたの。でも、いまはしんじゃったの。だから、ひらくようになったの」
〈そうか…〉
「むねのなかにね、ビーズがはいってて、でも、それがわれちゃったの。それで、しんじゃったの。でも、ひらくようになったの」
〈うん…〉

抱きしめるよりない。収まりどころが見つからなかったものが、ボールを使った儀式や、見立てによるイマジネーションの中で、何とか場所を探り当てはじめたように思う。まだ、時間はかかるのだろう。

2年前、まだ息子がしゃべっていなかった時、妻の祖母、息子からすればひいおばあちゃんが亡くなった。病院で、私がだっこした状態で、息子はババに“ばいばい”をした。「ばいばーい」と息子が声をかけても、ババは起きなかった。1歳の息子は、不思議そうな、不安そうな顔をしていた。

その後、早朝、私や妻よりも早く起きてしまうと、布団の上をハイハイして来て、私の顔や、妻の顔をなでる、という行動がしばらく続いた。寝ている私たちを見て、“もう起きないのではないか”、そう不安になっているように、私には見えた。目を覚まして動き出す私たちをみて、とても嬉しそうな顔をしていた。

死は、息子にはどのように受け取られているのだろう。子どもの発達段階に合わせて、死の概念の伝え方を変える、ということは良く言われはする。天国に行って幸せに暮らしているよ、と言うこともあるのだろう。遠い国にいっちゃったんだ、と言うこともあるのだろう。しかし、もしかしたら、2歳3歳の方が、私たち大人などより遥かに、死の本質をつかまえているのかもしれない。

死ぬことによって開くようになったドアとは、一体何のことなのだろう。息子は一体、何を観たのだろう。

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