スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

12/11(火)5限 水曜の会

12月の水曜の会は、

12/11(火)5限
14−101にて

です。曜日がいつもと異なり、火曜日になっておりますのでご注意ください。
テーマは、「人を魅きつける文の書き方」です。

また、今後の水曜の会の予定を記載致します。

第22回 12/11(火) 14−101  5限
第23回 1/16(水)  教室未定    5限
第24回 3/13(水)  教室未定    4限

水曜の会の日にちに限らず、水曜日は基本的に13:30ごろより11号館3階 教育学第2研究室におります。よろしくお願い致します。


スポンサーサイト

乾いた地面

喫茶店に入る。おそらく20台前半であろう、女性2人と男性2人が話している。

女性Aが言う言葉を聞いていて、奇妙な感覚を受けた。

彼女は高校卒業後にオヤジ狩りをしていたという。ただ、オヤジに限らず、相手は道を歩いている人なら別段誰でも良かったそうだ。女性は狙わなかったらしい。理由は「女だと、トラウマだとか心の傷だとか、ねむたいこと言うじゃん。男だったら、そんなん勲章っしょ」とのこと。最終的に盗るものは、パソコンや時計など、金目のものなら何でも良かったという。「え、だって売れば良いじゃん」。結果、逮捕されたのだそうだ。一緒に犯行を行っていた男性3人は刑務所に入ったという。しかし、女性Aは「金で釈放された」という。「金は後輩からカンパした」。それは特例だったのだ、という。「そんなもんか、って思ったよ」。A:「でも、実際には親が動いたんじゃん?知らねーけど」、B:「え、あんたの親父って何やってるんだっけ?」、A:「ふつーの会社役員。でも、裏とのつながりある。あたしの男が変わったことも知ってたりする。後輩から聞き出してんの」。


乾いた、かさついた声だった。楽しげには聞こえる。賑やかには聞こえる。その話題が出るまで、浮気の話、仕事場での無茶苦茶な行動の話など、テンション高く話していた。しかし、どれも眠くなるような印象を、私は受けていた。


内容的な刺激は強いが、退屈であった(本当の話かどうかもわからないような内容ではあるが)。私から顔が見えない位置ではあったが、一緒にいるメンバーの声がくぐもったものとなっていたのは、おそらく眠くなっていたからではないか。


何度聞いても面白い話はある。たとえ、単純に出来事をトレースしただけの話であったとしても。しかし、女性Aの話は、刺激は強くとも、そこから何も感じるものがなかった。1度聞くだけでもうたくさん、何度も繰り返されたのではたまらない。そういうタイプの「昔話」であった。私が知りたかったのは、たとえばオヤジ狩りをしている時、親が裏で動いたことを知った時、彼女がどのように感じたのか、そういうことであった。しかし、女性Aの話は、まるで感じることを麻痺させているかのような印象を与えていた。そこには、ひび割れた、乾ききった地面があるだけだった。



想像をたくましくしてみる。

男が変わったことですら、知らぬうちに調査して把握しようとするような父親の強力な支配下にある時、そこから逃れるために暴れたかったのではないか。もがいても脱出できないことを悟った時、途方に暮れたのではなかったか。父親が、あるいは母親が困ることであれば何でもやってやれ、ある意味時自暴自棄にそう思ったのではなかったか。少ないツテとコネを使い、自ら解決しようとしたことも、結局は裏で父親が動いていたことを知った時、自分に残された最後の自発的な行動すら無効化された時、世界が壊れれば良いと感じはしなかったか。




乾くであろう。その行動を繰り返していては、水は何処からも流れてこなくなるだろう。たとえ流れてきたとしても、もう、受け入れ貯めておくだけの土手も防壁もなくなっている。自ら砕いてしまったのだから。


前科(にすらなれなかったが)があることを「勲章」としているような、その物言い自体は馬鹿らしくもある。聞くに堪えないものかもしれない。しかし、その奥に言い知れぬ空虚感が漂っていた。


女性Aはコーチのバッグを持っていた。そのバッグは、すり切れてしまうような、ボロボロの扱いを受けていた。ブランドもののバッグがボロボロの扱いを受けていること。多分、彼女自身が、彼女自身に対して行っていたことなのだろう。今、どんな気持ちで生きているのだろう。


たとえ、自分が非道いことをしてしまったとしても、それを咀嚼し、吸収し、養分とするしかない。傷は消えないし、たとえ流血が止まったとしても、一生疼くだろう。出来事がただ通り過ぎるだけのような暮らしを続けることは、彼女をおそらく救いはしない。そして、誰も救ってはくれない。誰にも救えない。救えるのは、彼女しかいない。しかし、彼女の内側から湧いている感情をひび割れた地面に染み渡らせ、土手をコツコツ再建し、水を溜めて行くその「やり方」自体を、誰かが見せることはできるのだろう。ただ、彼女自身が、生き方を変えたいと思わなければ、難しい。なぜなら、泥だらけになりながら、何年もかけて、土手を作るのは彼女しかいないから。誰かに作ってもらおうとしている内は、どうにもならない。


私は再び、ドストエフスキーの「罪と罰」に出てくる、スヴェドリガイロフという登場人物を思い出していた



プロフィール

Author:ina
水曜の会用 文書置き場

カテゴリ
写真保管庫
最新記事
月別アーカイブ
検索フォーム
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。